蜜愛シンドローム ~ Trap of Kei ~
卓海の言葉に、絢乃ははぁと息をついた。
・・・今朝。
起きてリビングに向かった絢乃は、慧がいないことを思い出し、力なく項垂れた。
いつもは絢乃が起きると、慧が明るく声をかけてくれるのだが・・・。
慧がいないだけで、なぜか部屋は寒々しく、フローリングに触れている裸足の足がやたら冷たく感じる。
あの紙には、いつまでホテル住まいするのかは書いていなかった。
慧がいない日々が、あと何日続くのか・・・。
自立したいと思っていたのに、いざ一人になると、凍えるような寂しさに襲われる。
・・・きっと一人暮らししている人たちは、この寂しさに耐えて、乗り越えてきたんだろうな・・・。
これを乗り越えなければ、自立は出来ない。
そうわかっていても、身を切るような寂しさと切なさが胸にこみ上げる。
「・・・言えよ。何があった?」
「・・・」
「命令だ。言え。言うまではここから出さない」
・・・相変わらず滅茶苦茶だ。
しかし、卓海は慧の友人でもある。
卓海には言っておいてもいいかもしれない。
絢乃は重い口を開け、ゆっくりと昨日の出来事を話しはじめた。