蜜愛シンドローム ~ Trap of Kei ~
絢乃の姿が見えない分、いろいろなことを想像してしまう。
もう、二人は付き合い始めたのではないか・・・。
焼けるような黒い嫉妬が慧の胸を苛む。
近くにいるのも辛いが、遠くで見えない不安に駆られ、嫉妬するのも辛い。
・・・そう、どちらにしても、辛いことに変わりはないのだ。
見えない想像に苛まれる分、ここに来てからの方が辛いかもしれない・・・。
よく、恋愛は幸せとイコールのように言われるが・・・
慧にとって恋愛は、苦しみそのものだ。
恋愛は自分が幸せになるためのものではなく、自分がどれだけの苦しみに耐えられるのか試すためのものだ。
・・・どれだけ、耐えればいいのか・・・。
この苦しみから解放される日は、来るのだろうか。
と、その時。
プルル、と携帯が鳴った。
慧はとっさに携帯を取り上げ、外側の小さな液晶版を見た。
表示されている名前は『角倉沙耶』。
─── 一瞬、絢乃からかと期待してしまった自分が、ひどく愚かに思える。