蜜愛シンドローム ~ Trap of Kei ~




慧は自分が彼女に絢乃を投影していると気付いてはいたが、沙耶の強い要望に押される形で、二人は付き合うこととなった。

そのまま1年半ほど付き合ったものの、沙耶のことを心から愛することはできず、大学卒業とともに沙耶に別れを提案した。

沙耶は最初は反対したが、卒業後に芸能事務所に所属することが決まっていたこともあり、話し合いの結果、二人は別れることとなった。

───体では彼女を愛せても、心ではどうしても愛することができなかった。

いくら沙耶を愛そうと思っても、家に帰れば、誰よりも何よりも愛しい女が『おかえり~』と笑顔で出迎えてくれるのだ。

そんな状態で、他の女を心から愛せるはずがない。


慧は携帯をまじまじと見つめた。

このまま考え込んでいても、どんどん自分の心が負の方向に傾いていくだけだ。

気分転換には、ちょうどいいかもしれない。

・・・沙耶には申し訳ないが・・・。

慧は立ち上がり、身支度をするため洗面所へと向かった。



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