蜜愛シンドローム ~ Trap of Kei ~
テレビでは何度か見たことがあるが、まさかここで実際に会うとは思ってもみなかった。
沙耶はその清純そうな、けれど大人の女の色気を湛えた瞳を細め、口を開く。
「・・・この部屋の主は、今は外出中よ。何か用かしら、お嬢さん?」
沙耶はじっと、正面から絢乃を見つめる。
・・・その視線に含まれる鋭さと、大人の余裕。
『あなたのような子供がここに何の用?』と言外に告げられ、絢乃は背筋を強張らせた。
どうして、角倉沙耶がここにいるのか・・・。
慧は仕事だと言っていたが、実際は・・・。
黒いものが、物凄い勢いで絢乃の心を覆っていく。
絢乃はぐっと唇を噛みしめた。
そんな絢乃の前で、沙耶は威嚇するように絢乃を見ていたが、やがて不思議そうに首を傾げた。
「あなた、・・・慧にちょっと似てるわね?」
「・・・」
「ひょっとして、慧の妹さん?」