蜜愛シンドローム ~ Trap of Kei ~



時計の針は深夜02:00を指している。

夜闇の中で、枕元に置いた時計の針が蛍光色にうっすらと光っている。


「・・・約束、か・・・」


慧は目を伏せ、呟いた。

───懐かしい想い出。

遠い約束。


きっと絢乃は、あの約束を忘れているだろう。

慧だけが、あの約束に縋るように───二人で交わした約束を、忘れられないでいる。

あの約束を忘れ、絢乃のもとを離れれば、自分は幸せになれるのだろうか・・・。

けれど何度自問しても、出てくる答えは変わらなかった。


───例え不幸になっても、自分は絢乃の傍にいたい。


いずれ絢乃は慧のもとを離れ、別の男と人生を歩み始めるのだろう。

・・・いつか訪れる、終わりの日。

いつ来るかわからないその日を、慧はずっと恐れてきた。

しかし恐れながらも、慧は絢乃の傍で、絢乃が求めるものを与え続けてきた。

家族愛、心の拠所・・・。

それらを惜しみなく与えることで、慧は自らの心を満たしてきた。

自分は満たされているのだと、自らに思い込ませ・・・終わりの予感から、無意識のうちに目を背けようとしていた。

けれど・・・。

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