蜜愛シンドローム ~ Trap of Kei ~
絢乃はぐっと携帯を握りしめた。
慧がダメというときは頑固だ。
けれどどうしても、自分は慧に確認しなければならない。
絢乃はひとつ息を飲み、言った。
「ダメって言われても行くから。部屋番号も知ってるし」
『・・・え、アヤ?』
「じゃあ、また後でね?」
絢乃は強制的にぶちっと電話を切った。
その瞬間、涙がじわっと視界に滲む。
・・・どうして、慧はダメと言ったのだろうか。
ひょっとして、角倉沙耶が部屋にいるからだろうか・・・。
角倉沙耶と慧が一緒にいることが嫌なのではない。
慧が自分にそれを隠そうとしていることが、・・・嫌だ。
慧が角倉沙耶と一緒に暮らしたいのであれば、自分はそれを応援する・・・だろう。
絢乃は自分にそう言い聞かせながら、田町駅への道を歩いて行った。