蜜愛シンドローム ~ Trap of Kei ~
カフェに入った二人は、窓際の席に向かい合って座った。
・・・こうして慧と向かい合うのも、10日ぶりだ。
毎日、なんでもないことのように思っていたことが、今はひどく特別なことになったような気がする。
慧はコーヒーカップにその白く長い指を伸ばし、優雅な仕草で一口飲んだ。
「・・・で? 聞きたいことって?」
「慧兄。・・・どうしてマンションを出たの?」
絢乃の言葉に、慧は一瞬驚いたように眉を上げた。
しかしすぐにいつもの表情に戻り、口を開く。
「あのメモにも書いたと思うけど。仕事だよ」
「・・・じゃあなんで、角倉さんが慧兄の部屋の前にいたの?」
「・・・」
絢乃が言うと、慧はふっと視線を逸らした。
・・・触れて欲しくない、と言いたげなその態度。
しかしここまで来て、何も聞かずに帰るわけにはいかない。