蜜愛シンドローム ~ Trap of Kei ~
絢乃の胸に、カッと怒りが沸き上がる。
どうして慧は、自分に向き合おうとしてくれないのか。
・・・どうして、自分を拒絶しようとしているのか。
絢乃は思わず立ち上がり、慧の背に向かって叫んだ。
「慧兄、どうして・・・! こんなの、慧兄らしくないよっ」
「・・・」
絢乃の声に、慧はぴたっと足を止めた。
・・・そして、しばしの沈黙の後。
慧はくるりと振り返った。
「おれらしい、ね・・・」
「・・・っ」
「ね、アヤ。『おれらしい』って何?」
慧は険しい声で言う。
けれどその目に浮かんでいるのは、・・・まるで奈落を映したかのような、深い苦しみ。