蜜愛シンドローム ~ Trap of Kei ~
<side.慧>
22:00。
出先からホテルの部屋に戻った慧は、壁際に置かれたソファーにどさっと腰を下ろした。
目元を片手で押さえ、深いため息をつく。
携帯を見ると、絢乃から『明日の夕方に行く』とメールが入っている。
目を閉じると、数日前の絢乃の姿が脳裏に浮かぶ。
・・・10日ぶりに会った、絢乃の姿。
一目見た瞬間、慧の心はまっすぐ絢乃に飛んでいた。
───心の底から愛しい女。
会ってはならないと思いながらも、心の奥底では会いたいと切望していた。
───あの日。
絢乃からここに来ると電話があった時、ダメだと言いつつも、心の隅では押さえきれない喜びを感じていた。
下のカフェで会ったのは、ここに来られてしまったら自分が何をするかわからないからだ。
きっと絢乃がここに来たら、自分は絢乃を帰せなくなるだろう。
離れていた間に、想いはひたすら募っていき、今では暴発寸前になっている。
・・・ここに来たのは失敗だったかもしれない、と今更ながら思う。
離れれば離れるほど、自分は絢乃のことを考えずにはいられない。