蜜愛シンドローム ~ Trap of Kei ~
卓海とのこともそうだが、ちゃんとご飯を食べているのか、危険な目に遭っていないか・・・。
傍にいれば守ってやれるのに、今は守ってやることができない。
全てが心配になり、何をしていても絢乃のことを考えてしまう。
隠しカメラでもつけておけば良かったか、などと危険なことまで考えてしまう。
・・・しかし・・・
もう、あのマンションに戻ることはできない。
ここまで想いが育ってしまった今、もはやただの兄として絢乃に接することはできない。
絢乃が寂しがっていると、わかっていても・・・
絢乃と二人きりの生活に戻ることは、もう、できない。
今日の態度からして、絢乃は恐らく、まだ納得していないだろう。
けれどいくら来られても、本当のことを話すわけにはいかない。
であれば・・・。
例え嘘でも、偽りでも・・・絢乃が納得するような答えを用意するしかない。
絢乃がどう思うのかはわからない。
けれどもう、こうするより他に方法はない。
・・・絢乃を守るために、絢乃を自分から遠ざける。
もはや絢乃にとって一番危険なのは自分だ。
例え一時的に絢乃を傷つけることになっても、絢乃のことを思えば、その方がいい。
慧はひとつ息をつき、サイドテーブルに置かれた携帯に手を伸ばした。