蜜愛シンドローム ~ Trap of Kei ~
4.手放したもの
翌日。
絢乃は前回と同じように、ロイヤルパーク汐留タワーの1Fにあるカフェにいた。
慧からこの場所を指定されたのだが・・・。
窓際近くの隅の席に座った絢乃は、慧が来るのを辺りを見回しながら待っていた。
・・・と、そこへ。
エントランスの方から、見覚えのある二人が歩いてくるのが見えた。
スーツにコートをという姿の慧と、その腕に手を絡めて楽しそうに慧を見上げる、黒いワンピースを着た角倉沙耶の姿。
まさに美男美女という感じで、お似合いの二人だ。
けれど二人の姿を見た瞬間、絢乃の胸にズキッと鋭い痛みが走った。
・・・あの人に、慧を渡したくない・・・。
なぜ、そう思ったのかはわからない。
ただの子供じみた嫉妬なのか・・・。
目を瞠る絢乃の視線の先で、二人は二言三言交わした後、笑顔を交わして離れた。
・・・その、優しい笑顔。
慧が角倉沙耶に向ける笑顔を見、絢乃は胸が引き裂かれるような気がした。