蜜愛シンドローム ~ Trap of Kei ~
ぐっと手を握りしめた絢乃の視線の先で、角倉沙耶は胸ポケットからサングラスを出し、すっと掛けた。
・・・その、大人っぽい仕草。
角倉沙耶はそのまま踵を返し、外へと出て行く。
やがて慧はすたすたとカフェに入り、絢乃の席の向かいに座った。
・・・角倉沙耶に向けていたものとは違う、険しい表情。
いつも、慧は自分にだけは笑顔を向けてくれていたのに・・・
どうして、今は硬い表情しか向けないのか・・・。
「・・・来ちゃダメってこの間言ったのに。なんでまた来たの?」
「だって、慧兄が・・・」
「・・・ちょっと待って」
慧は軽く手を上げて絢乃の話を止め、やってきたウェイターにコーヒーを手早く頼んだ。
そのまま腕を組み、椅子の背に軽く寄りかかる。
絢乃は慧を見つめながら、ゆっくりと口を開いた。
「・・・ね、慧兄」
「・・・」
「一度、マンションに戻ってきて。これからのこと、ちゃんと話したいの」