蜜愛シンドローム ~ Trap of Kei ~
絢乃はまっすぐ慧を見つめながら言った。
慧は何も感情を映していない目で絢乃を見つめている。
・・・その、空虚な目。
けれどその空虚さの裏に、ひどく昏い何かを感じるのは気のせいだろうか・・・。
絢乃は胸の痛みを感じながら、必死で言った。
「あのマンション、慧兄の資産だし。出て行くなら私かなって・・・」
「別にアヤがあそこを出る必要はないよ。あのマンションも、欲しいならあげるよ?」
「でも・・・っ!」
絢乃は声を荒げた。
・・・違う。
言いたいことはそんなことじゃなくて・・・
どうしたら、慧が戻ってきてくれるのか・・・。
聞きたいのは、それだ。
しかし慧はひとつ息をつき、冷静な声で言った。
「・・・別にその話だけなら、マンションに戻る必要はないだろ? ここで話せばいい」
「でも・・・っ」
「アヤが欲しいなら、手続きはおれのほうでしておくよ。書面上の問題だけだからね?」
「・・・っ・・・」