蜜愛シンドローム ~ Trap of Kei ~



けれどこの想いを伝えたら、絢乃は唯一の家族を失ってしまう。

絢乃は慧がこんな想いを抱いているとは想像もしていないはずだ。

─── 一度言ってしまったら、家族には戻れない。

伝えた瞬間、二人の家族としての関係は終わり、築いてきたものを全て失ってしまうだろう。

絢乃にそんな苦しみを味わわせるわけにはいかない。


───そう、わかっている。


もとより、選択肢はないのだ。


絢乃は自分を兄としてしか見ていない。

それは慧も痛いほどにわかっている。

何度か、もしかしたら・・・・と思ったこともあった。

けれど、期待するたび、望むたび・・・それは無残にも打ち砕かれた。


自分は恐らく、兄でいすぎたのだろう。

しかしそれは、慧が望んだことでもある。

絢乃を愛していたから───

絢乃が望む限り、自分は兄でいたいと思っていた。

たとえ、どんなに辛くても・・・。


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