蜜愛シンドローム ~ Trap of Kei ~
自分は慧に甘え過ぎてしまったのだろう。
慧がいろいろしてくれることに対して、ちゃんと正面からお礼を言ったこともない。
ただ、与えられるものを当然のように受け取っていた・・・。
自分の愚かさが身に染みる。
幾ら後悔しても、もう遅い・・・。
慧は、もう自分と一緒に暮らしたいとは思ってないのだ。
そう、わかっていても・・・
───それでも、戻ってきてほしいと思わずにいられない。
飽きたと言われても、それでも・・・
・・・慧に、戻ってきてほしい・・・。
慧が戻ってくるなら、自分は心を入れ替えて、慧のために何でもするだろう。
慧が、これまで絢乃にいろいろしてくれたように・・・。
絢乃はしゃくり上げながら、改札を抜けた。
すれ違う人々が何事かといったように絢乃を見る。
しかし絢乃はそれを気にすることなく、電車のホームへと歩いて行った・・・。