蜜愛シンドローム ~ Trap of Kei ~




自分は慧に甘え過ぎてしまったのだろう。

慧がいろいろしてくれることに対して、ちゃんと正面からお礼を言ったこともない。

ただ、与えられるものを当然のように受け取っていた・・・。

自分の愚かさが身に染みる。

幾ら後悔しても、もう遅い・・・。


慧は、もう自分と一緒に暮らしたいとは思ってないのだ。

そう、わかっていても・・・


───それでも、戻ってきてほしいと思わずにいられない。


飽きたと言われても、それでも・・・

・・・慧に、戻ってきてほしい・・・。


慧が戻ってくるなら、自分は心を入れ替えて、慧のために何でもするだろう。

慧が、これまで絢乃にいろいろしてくれたように・・・。


絢乃はしゃくり上げながら、改札を抜けた。

すれ違う人々が何事かといったように絢乃を見る。

しかし絢乃はそれを気にすることなく、電車のホームへと歩いて行った・・・。



< 70 / 200 >

この作品をシェア

pagetop