蜜愛シンドローム ~ Trap of Kei ~
<side.慧>
絢乃の姿が見えなくなった後。
慧は目元を覆い、重苦しいため息をついた。
・・・絢乃を、傷つけてしまった。
絢乃の傷ついた顔が、脳裏に浮かぶ。
信じられないと言ったように慧を見た、あの目・・・。
───本当は、絢乃を追いかけて抱きしめたい。
抱きしめて、違うと叫びたい。
絢乃が好きだから、兄としては傍に居られないから、離れたのだと・・・
そう、伝えたい。
きっと、絢乃は泣いているだろう。
それを思うと、心が引き裂かれそうに痛む。
けれど・・・。
きっと追いかけたら、自分はこの想いを告げてしまうだろう。
泣いている絢乃を前にした時点で、恐らく自分の理性は一瞬で崩壊し・・・
絢乃に対し、何をしでかすか自分でもわからない。