蜜愛シンドローム ~ Trap of Kei ~




冬の冷たい夜闇が慧の体を冷やしていく。

絢乃と過ごした、幾度の冬、春・・・

絢乃との想い出に溢れた、懐かしく輝かしい日々。

・・・絢乃が傍にいるだけで、自分は幸せだった。

けれどもう、絢乃との想い出を増やすことはできない。

今、絢乃が自分の傍にいてくれることすら、儚い奇跡だ。


慧は夜闇をじっと見つめた。

───絢乃のいない人生は、慧にとっては冷たい闇にしか見えない。


闇は、すぐ近くまで迫っている。


終わりの日は、近い。

慧はしばらく夜闇を見つめた後、そっと目を閉じた。



< 8 / 200 >

この作品をシェア

pagetop