蜜愛シンドローム ~ Trap of Kei ~
───そして、一時間後。
待ち合わせ場所に現れた絢乃の姿を見、卓海はぽかんと目を見開いた。
ちなみに待ち合わせ場所は有楽町駅の改札前で、イブだからか、待ち合わせをするカップルの姿が多い。
「・・・は? お前、その恰好でディナーショーに行くわけ?」
「・・・」
卓海はいつもより少しスタイリッシュなグレーのスーツを身に着け、首元には青緑色のマフラーをゆったりと巻き、胸ポケットには飾りのスカーフを差している。
まさにディナーに向かいます、という感じの格好だ。
行き交う人々が、卓海の姿をちらちらと見ながら通り過ぎていく。
はっきり言って、モデル並みのイケメンぶりだ。
それに比べて自分は・・・。
「・・・すみません。これしかなかったので・・・」
「・・・マジ?」
卓海は唖然と絢乃を見る。
・・・無理もない。
自分でも、ちょっとこれはないなと思うような格好なのだ。
悄然とする絢乃の全身を見、卓海ははーっと盛大なため息をついた。