蜜愛シンドローム ~ Trap of Kei ~
絢乃は慌てて首を振り、卓海を見上げた。
自然にしていないと、卓海にヘンに思われてしまう。
卓海には、まだ慧がディナーショーに来るかもということは言っていない。
「ここの1Fにカフェがある。そこで時間を潰すぞ」
「あ、はい」
と言いかけ、卓海に引かれるがまま、カフェの方へと歩き出した絢乃だったが。
───カツン、とフロアに響いた靴の音に、はっと足を止めた。
この、足音は・・・。
長年傍にいたからか、振り返らなくてもわかる。
・・・空気が、凍る。
恐る恐る振り返った絢乃の目に映ったのは───
これ以上はないというほどに目を見開いた、慧の姿だった。