蜜愛シンドローム ~ Trap of Kei ~



慧は絢乃の手を掴んだまま、ちょうど降りてきたエレベーターに絢乃を引きずり込んだ。

そのまま手早く38階のボタンを押す。

何が起こったのかわからず呆然とする絢乃の手を、慧がぐっと握りしめる。

───絶対に逃がさない、というように。

二人を乗せたエレベーターは、かすかな機械音とともにゆっくりと動き始める。

やがてエレベーターが止まり、絢乃は再び引きずられるようにしてエレベーターから降ろされた。

そのまま、慧の部屋の前へと連れて行かれる。

慧は急いた様子で部屋の鍵を開けると、絢乃を部屋へと引きずり入れた。


・・・何が起こっているのか、わからない。

けれど、これだけは確実に言える。


───慧は、怒っている。


何に怒っているのかはわからない。

絢乃がここに来たことを怒っているのか・・・。



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