蜜愛シンドローム ~ Trap of Kei ~
2.未来のために
翌日の朝。
絢乃はキッチンでおかゆを作っていた。
───慧が病気になることはめったにない。
慧が病気の絢乃を看病してくれたことは何度もあるが、逆は恐らく、片手の指で収まるぐらいしかないだろう。
いつも慧にいろいろと面倒をかけているので、せめてこんな時ぐらいは慧の役に立ちたい。
絢乃は出来上がったおかゆを椀によそい、お盆の上に乗せた。
ついでに薬と水も載せる。
盆を持ち上げ、慧の部屋のドアを軽くノックすると、中からくぐもった声が聞こえた。
「・・・アヤ・・・?」
「慧兄、入るよ?」
絢乃はゆっくりとドアを開け、慧の部屋に入った。
慧の部屋は仕事部屋にもなっているため、焦茶を基調としたシックな棚に、パソコンや本が整然と並んでいる。
部屋の所々に小さなグリーンが置かれ、それに合わせて麻や綿などの自然素材のマルチカバーやクッション、クロスなどが自然な感じで配置されている。
慧は自身の服装や容姿には無頓着だが、インテリアなどのセンスはかなりいい。