蜜愛シンドローム ~ Trap of Kei ~
無意識のうちに、絢乃は慧が自分から離れた理由を感じ取っていた。
この数か月のことが全て符合していく。
・・・自分から離れたのも、飽きたなどと言ったのも・・・。
きっと慧は、絢乃のために兄でいようとしたのだろう。
自分が、それを望んでいたから・・・・。
だから、慧は・・・。
慧が、どんな気持ちであんなことを言ったのか・・・。
───今なら、わかる。
絢乃の目から、涙がとめどなく流れ落ちる。
慧はぐいと絢乃の体を抱き寄せ、耳元に囁いた。
「だからお前が大学に入ってあの男と付き合い始めた時、あいつを殺したいって思った。頭の中で何度あいつを殺したかわからない」
「・・・慧・・兄・・・」
「そして何度、夢の中でお前を抱いたかわからない。・・・自分がおかしいのかって思ったこともある。でも何度諦めようとしても、諦められなかった」
言葉とともに、絢乃の唇に優しい口づけが降ってくる。
絢乃は涙に潤んだ瞳をそっと伏せた。
慧の言葉が熱い杭のように絢乃の胸に突き刺さる。