舞い散る花の導く先に
「ふふ、あなたとこう対面して話すのは初めてね」

そういって彼女は、いいえ、濃姫は微笑む。

その体は少し透けている。

呉「そうね。濃姫」

濃「なんだか変な気分ね。過去の私と今の私が向かい合うなんて」

呉「でも、どうして?」

彼女と私が同じ魂ならばこういう風に対面的に話すなんてことはまずないはずだ。

だけど、目の前にいるのは紛れもない前世の私だ。

濃「ふふ。櫻の見せる夢よ。これは」

呉「夢・・・・?」

濃「ええ。呉羽。私の願いは今日成就されたわ。もうこれで、私が現世に残る意味はなくなった。」

呉「それって・・・・」

濃「もう私はあなたの体を借りることも、あなたの意識に問いかけることもないわ」

呉「成仏するの?」

そう問いかけると濃姫はおかしそうに笑いだす。

濃「ふふ。成仏って失礼ねえ。私はもうとうの昔に成仏しているわ」

呉「あ、そうだったんだ・・・・」

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