舞い散る花の導く先に
濃「今の私はね、魂に残された残像の様なものなのよ。願いが叶ったらならばもうこの世にあらわれる意味はない。ただ、それだけ」

呉「じゃあ、もうあなたに逢えないの?」

そう思うと涙があふれてきた。

小さいころから身近に感じていた存在。

その存在がなくなるという頼りない気持ち。

そして私の過去だけど、私の過去ではない記憶。

これからが、すべてなくなってしまうような気がした。

呉「いままで信長様に逢うために生きてきた私はこれからなにを支えに生きていけばいいというの?」

そう問いかけるとそっと濃姫は私を包んでくれる。

濃「まったく、魂は同じなのにこうも性格が違うなんてね。」

温かい。

小さいころから感じていたぬくもりだ。

濃「これからはあなたがあなたの人生を見つけていく番よ。その人生を見つけるのに私の道しるべはもういらないの。」

呉「私の、人生・・・」

濃「あなたと私は同じだけど同じではないの。それに、今のあなたの心にはもう違う人がいるじゃない。」


呉「え?」

そう言われてまっさきに思い出した存在。

・・・・・・・沖田さん?


私の顔をみて濃姫はにこりと微笑む。

そして、すこし苦しげに表情をゆがめる。
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