舞い散る花の導く先に
また、夜が来る。

ここにきて何度目の夜かしら?

私は寝巻に着替えようかと手を伸ばすけれども、やっぱりやめる。

まだ、眠くないからだ。

ここでの生活は悪いものではない。

むしろ、温かさを感じる。

周りの人たちは何とかして私を楽しませようとしてくれる。

だけど、どうしても私はなじめない。

どこかに殺されるかもしれないという危険意識があるからだろう。

障子から月の光が差し込む。

今宵は満月なのだろう。

見たい、けれど外に出たら見張りの人に見つかってしまう。

私はぼんやりと障子の映る月を眺めていた。

「おい、呉羽。起きてるか?」

突然声をかけられてびくりとする。

この声は原田さん?

私はそっと襖を開ける。

「おお!起きてたか。いきなりすまねえな。」

「あ、いえ。」

「あれ、まだ寝巻に着替えてなかったのか?」

「あ、すみません・・・・」

私は怒られると思いうつむく。

「なんで謝るんだよ!別に悪いことしてるわけじゃねえだろ?ただ夜も更けてるからてっきり着替えてると思っただけなんだよ。」

そう言って慌てたように話す。
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