舞い散る花の導く先に
沖「随分強い風だったね」

呉「はい。」

そのまま沈黙が訪れる。

呉「沖田さん」

沖「ん?なに?」

呉「正直、今も信長様のことは好きです」

沖田さんは黙って私の話を聞いてくれる。

呉「でも、現世では結ばれたいとは思っておりません」

沖「どうして?好きなんでしょ?」

不思議そうに尋ねてくる。

呉「少し、私の昔話を聞いてくれますか?沖田さんにとってはとてもつまらないと思いますが・・・」

沖「ちょうど暇を持て余していたんだ。ぜひ聞かせてほしいな」

沖田さんは優しく微笑んでくださる。

2人で縁側に座る。

呉「沖田さん、私が前世で信長様と出会ったのは16のころでした。丁度、現世の私と同い年ですね」

沖「どうして信長の正室になったの?」

呉「もともとは同盟のための婚姻でした。つまり政略結婚ですね。私は最初この結婚がすごく嫌だったんです」

沖「どうして?」

呉「信長様は大変変わり者と家臣や乳母や侍女たちから言われておりました。そんな人のもとに沖田さんなら嫁ぎたいと思いますか?」

沖「確かにそれは嫌だね」

苦笑いで答えてくれる。

私も同じ気持ちだった。

それは嫁いでからも変わらなかった。

ろくに顔も見せてくださらなければ、名前すら呼んでくれない信長様。

私は毎日ため息をついて過ごしていた。
< 75 / 128 >

この作品をシェア

pagetop