大人的恋愛事情 SS
よくわからない女の態度は、誘った俺をも悩ませる。
誘っておきながら、今さらながら、どうして付いてきたのかよくわからなくなってきた。
キーを手に持ち振り返ると、俺を見て立ち上がり、やけに簡単に付いてくる。
エレベーターに乗り込み、部屋まで辿り着く間も、ペットボトルのお茶を飲む自然体な姿に、今からこの女を抱くという欲望がなんとなく薄れる気がした。
よく考えると、別にしなくてもいい。
酔いが醒めたら帰ってもいいな。
それまで話をしてもいいし、今までまったく接点がなかった関係を、少し深められたらそれでいい。
もしかしたら俺に多少の好意を持っているのかも。
それなら尚更、無理やりなにかするより、今後の事を考えると……。
そう思いながら部屋の鍵を開け、繭を先に通す。
後ろ手にドアを閉めながら、小さなツインルームの明かりを点けると、先に入った繭がコートを脱ぎベッドに座りながら俺を見上げた。