大人的恋愛事情 SS
「ちょっと詩織さん、どこ行くんですか?」
「ごめん、先に帰る」
「えぇっ! 信じられないっ」
美貴ちゃんが、席を立とうとする詩織に不満をあらわにすると、大沢部長がその声に反応してこちらを見る。
「荒川君、なんだ帰るのか?」
「はい……すみません、今日彼のご両親が田舎から出てきてまして……」
白々しく困った様子で言う詩織に、先ほどから愚痴しか口にしてない部長が知った顔で頷く。
「それは早く帰らないとマズイな」
なにがマズイのか……。
「すみません……」
「気にしなくていい。早く帰ってご機嫌をとっておきなさい」
とかなんとか言う部長に、美貴ちゃんがため息を吐く。
「部長が早く帰ればいいのに……」
隣で小さく呟く美貴ちゃんを、たしなめる様に睨みながらも、本音を言えば私もそう思っていた。