大人的恋愛事情 SS
今日は4月から移動になる、総務の同僚の送別会。
会社近くのこの居酒屋は、大沢部長のお気に入りで、ことあるごとに総務はここで飲み会を開くのが習慣になっている。
誰もが部長の愚痴にうんざりしている中、上手い具合に逃げる手堅い女にため息も出るってなもの。
「ホントなんですか?」
美貴ちゃんが帰って行く詩織を見ながら、疑わしそうに聞いてくる。
「知らない」
「絶対嘘ですよ」
「そうかもね」
「私も帰りたい……」
そうは言っても、さすがに場の雰囲気からして、次々に帰るわけにもいかないのが、会社勤めのサラリーマンの辛いところ。
「もうすぐ酔って部長が帰るわよ」
「さっきから、ずっとそれ言ってますけどぉ?」
よほど嫌なのかどこまでも不満そうな美貴ちゃん。
「藤井さんが家で待ってるからって、繭さん帰んないで下さいよ」
「帰らないわよ」