百鬼夜行と猫の瞳


嘘なんかでは無い
目の前の光景は事実なのだから
家族が団欒する筈のリビングに、トンネルのような物が出来ている
それも、先は暗く、何故か道になっている

有り得ない事が起きた
日常とは掛け離れた事が

先程までの恐怖はもう一欠けらも無くなり、どうしようもないくらいの好奇心で顔が綻ぶ

この先に自分を変えてくれる何かがある、俺はそう思った

少し考え、リビングを出ると2階の自室に急ぐ

床に落ちた携帯を拾い、画面を閉じて乱暴にズボンのポケットに入れる

そのまま自室を出て、また1階へ走る

穴の前へ行き、携帯の明かりで中を覗き込む

先は見えそうにない
どこに繋がっているのかも分からない
そもそも壁に穴が空いた所で何処かに繋がっている筈が無い

なのに俺は、無駄に膨らんだ好奇心から、その穴に入ってみたいと思った

玄関からスニーカーを持って来て穴の前で履くと、暗い暗い穴の中を歩き始めた

その中は、元々壁があった所とは信じられない程長い道があった

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