雨降る中で

「知恵！」



大声で呼ぶ声に私以外の生徒も扉に目を向けると遥が笑顔で教室に入って来た



勘弁してよ

遥が来ると目立っちゃうじゃない…


私は俯き手を止める事なく帰る準備をする


クラスの女子は学校のアイドル登場に少し騒がしくなっていたが遥はそんな事お構いなしに私の席に来る



「遥…」



「お前、始業式サボっただろ？」

「あっ…うん」

「何かあった？」


遥が心配そうに顔を覗きこんでくる



「…ううん」



そこにクラスの女子が数人が私達の方へ来た



「遥人、今日みんなで遊んで帰るんだけど遥人も一緒に行こうよ」



女子はチラッと私を見てくる




私は関係ない…

巻き込まないで欲しい…




「じゃ私帰るから、バイバイ」



私はカバンを持ち教室を出た



「鮎川さんって本当、愛想ないよね」



遥の周りに居た女子が私の背中を見つめ話している



「ごめん、俺も今日は帰るわ」



そう女子に言い遥は知恵を追いかけた




そんな様子を祐介は、ただ遠くから眺めていた



下駄箱で靴を履き替えてると遥が来た



「知恵？」


「何？遊び行ってくればいいのに」
　

笑顔の私に遥は少し戸惑っている


「どうしたの？」



「何が？」



「知恵…何かイライラしてない？」




靴を履きかけていた私は遥を見上げた



見透かされているような気がした



「クレープ食べて帰ろう、今日は俺が奢ってやる」



笑顔で言いながら遥は自転車を取りに行った




何で遥はいつも優し過ぎるんだろう




遥の背中を見ながらふとため息が出た