君はボクの天使?
彼は、この前のクマの着ぐるみの中に入っていた人だった

この美しくて憂いすら感じさせる声の主があの金髪の童顔だったなんて・・・

ショックだった

私は思わず彼に見つからないように
人の陰に隠れた

でも彼の歌はすごく聞きたくて
知らない人の陰に隠れたまま、結局彼が歌い終わって片付けを始めるまでその場を離れられなかった

こんなに人の声に執着したのは初めてだった
気持ちよくてうっとりとしてしまった

彼がギターを肩から下ろしたのを確認すると
私は上手に人に紛れて階段を上がって改札を抜けた

私の姿はバレなかったようだ

電車に乗り、思い出したようにあの日のティッシュを探した
バッグの底にクシャクシャになってそれは入っていた

そう言えば、あの人名乗ってなかったな

私はその番号だけが書かれているティッシュをじっと見つめた

さっきの声が頭のなかで繰り返し歌い続けていた












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