百鬼夜行の主~番外編~

幽side

「ねぇ、君1人~?」

如何にもチャラそうな男が私に話しかけた。ナンパか…?ときどきこうやってナンパされる。

いつもなら鬱陶しいと罵倒して男と勘違いさせて終わるが、今は顔を伏せているし女物の浴衣を着ているので罵倒できない。

ひたすら、じっと耐えるしかないのだ。

「ねぇ、無視しないで遊ぼうよ~」

男が私の腕をつかんだ。嫌な汗が頬に浮かぶ。

身体中が粟立つ。気持ち悪いと感じた。

「いやっ…!」

腕を振り払おうとしても恐怖で上手く力が入らない。

無理やり立たされそうになった。助けて…鬼灯…!!!助けを呼ぼうとした。瞬間、

「幽!!」

一番聞きたかった声が、私の鼓膜に響く。

私は反射的に声が聞こえた方を見る。そこには、息を切らした鬼灯がいた。

一瞬、動揺したのか男の力が緩んだ。私はその隙をついて男の大切な所を蹴り飛ばした。

「がっ…おあ"あ"あ"っ……!!」

男が呻き声を上げながらその場にうずくまる。

私は鬼灯の近くに走り、口を開いた。

「悪いが私はあんたみたいな軽薄な男、大っ嫌いだから」

「女の蹴りも避けれない間抜けも嫌だし」と私は言い捨てた。男は呻き声を上げている。

私は鬼灯の手を掴み、神社から出た。
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