百鬼夜行の主~番外編~
四月朔日side
俺は息を切らしながら雪羅さんの前に立った。
ヤバい…遅刻だ…完全に嫌われた…
「遅かったですね、何かありました?」
「え?あぁ…それがね…」
俺は木の皮や葉っぱだらけの体を見ながら今まであったことを話し始めた。
「へー…木に風船がかかっちゃった子供を見つけてとってあげた…ですか」
「ごめんなさい…」
「何故謝るんですか。人助けで遅れたんだったら是非もないですよ」
雪羅さんが静かに言う。俺は少しだけ顔をあげた。
目線の先には、真っ白な文字どおり雪のように白い手があった。
「遅れたのですから、これくらいはしてください。浴衣には慣れてますが、人混みで迷子になりそうです」
俺は真っ赤になりながらおそるおそる雪羅さんの手を握った。