秘めた想い~紅い菊の伝説2~
その様子を見ていた結城理恵は後ろの席から美佳の肩を突いた。一度、二度、美佳は知らぬ顔をしてそれには応えなかった。
理恵は痺れを切らしてシャープペンシルの先で軽く同じところを突いた。
「痛い、何するのよ」
美佳は小声で、しかし明らかに抗議の視線を投げて理恵に応えた。
だが、理恵はそれに気づいたそぶりも見せずに離れた席にいる義男を指さした。
「ほら、杉山君がこっち見ているよ」
理恵は美佳の胸の内など知っているかのように微笑んで見せた。
「だから、なによ」
美佳の抗議の姿勢は崩れていない。
「あんた、嬉しくないの?」
理恵は相変わらず微笑んでいる。その笑いは善意のものの反対側にあった。
「なんで私が?」
美佳は不意に垂れ下がってきた前髪を煩そうに掻き上げた。これが彼女の機嫌が悪いときの癖だった。
「あんた杉山君のことが好きなんでしょう?私に隠し事なんてできないんだからね。『消しゴムのおまじない』のことも知っているんだから」
そう言うと理恵は手を伸ばして美佳の消しゴムを取り上げようとした。しかし、それを悟った美佳の手によってその目論見は果たせなかった。
そのとき、二人の頭上を黒い球形の物体が勢いよく飛び去り、窓辺で話し込んでいた二人の女生徒のうちの一人に当たった。
ガッシャァァン!
ガラスの割れる大きな音が教室中に響き、その女生徒の姿が窓辺から消えた。
「佐枝!」
残された女生徒、美鈴の声が虚しく響いた。
理恵は痺れを切らしてシャープペンシルの先で軽く同じところを突いた。
「痛い、何するのよ」
美佳は小声で、しかし明らかに抗議の視線を投げて理恵に応えた。
だが、理恵はそれに気づいたそぶりも見せずに離れた席にいる義男を指さした。
「ほら、杉山君がこっち見ているよ」
理恵は美佳の胸の内など知っているかのように微笑んで見せた。
「だから、なによ」
美佳の抗議の姿勢は崩れていない。
「あんた、嬉しくないの?」
理恵は相変わらず微笑んでいる。その笑いは善意のものの反対側にあった。
「なんで私が?」
美佳は不意に垂れ下がってきた前髪を煩そうに掻き上げた。これが彼女の機嫌が悪いときの癖だった。
「あんた杉山君のことが好きなんでしょう?私に隠し事なんてできないんだからね。『消しゴムのおまじない』のことも知っているんだから」
そう言うと理恵は手を伸ばして美佳の消しゴムを取り上げようとした。しかし、それを悟った美佳の手によってその目論見は果たせなかった。
そのとき、二人の頭上を黒い球形の物体が勢いよく飛び去り、窓辺で話し込んでいた二人の女生徒のうちの一人に当たった。
ガッシャァァン!
ガラスの割れる大きな音が教室中に響き、その女生徒の姿が窓辺から消えた。
「佐枝!」
残された女生徒、美鈴の声が虚しく響いた。