秘めた想い~紅い菊の伝説2~
同じ頃、美鈴達の教室の中…。
「美佳、あの噂聞いた?」
午後の授業の準備をしている美佳の方に振り返り、理恵が言った。
「あの噂って?」
美佳は自分は関係ないとでも言うように気のない返事をした。
「例の噂よ。杉山君に近づくと呪われるって…」
理恵の目は面白そうに輝いていた。
この子は相変わらず…。
美佳は変わらない美佳の性格に溜息をついた。
「馬鹿ね、呪いなんてあるわけがないじゃない」
美佳は素っ気なく答える。
「そうかなぁ、でも良かったね。杉山君に告白(こく)らなくて」
「だから私は何の関係もないんだから。杉山君とは」
美佳はこのところしつこいくらいに美佳に対して義男の話題をふっかけてくる理恵に少し煩わしさを感じ始めていた。それならば、理恵の言うとおりにしたらどうなるのだろうか?。美佳は呪いとかおまじない、占いの類はあまり信じていなかった。自分の道は自分の努力で切り開くものだ。それが彼女の信条だった。まぁ、おまじないの類は息抜きのつもりでやってみることがある。消しゴムのおまじないはそんなものの一つだった。
実際、美佳は義男を憎からず思っている。だが、彼には佐伯佐枝という存在がいる。二人は互いに気づいてはいないようだが、二人の思いは通じ合っているようだった。
それは誰が見てもわかることだった。
だから美佳はそんな二人の中を裂く気はなかったのだ。
自分の気持ちは友人として義男に近づきたいだけ、決して恋愛などではない。美佳はそう言い聞かせてきた。この秘めた想いは誰にもわからない。
しかし今、義男はクラスのほとんどの生徒から白い目で見られ始めていた。特に女子は彼に近づこうとはしなかった。
あの噂が怖いからだった。
呪いの噂はこれで二度目だ。
いい加減うんざりする。
呪いなんてあるはずはないのだ。
ならば、それを自分が証明してやろう。
美佳はそう決意して義男の方に近づいていった。クラスメイト達が奇異な視線を彼女に送る。その中で大野孝だけが心配そうに美佳の様子を見守っていた。
美佳はそんな視線など気にせずに義男に近づいて誰にも聞こえるような声で言った。
「杉山君、あなたが好き。付き合って」
それはあまりにも事務的な言葉だった。
「おい、ちょっと待てよ」
美佳の告白に驚いた義男は彼女を廊下に連れ出した。そんな二人を孝が追っていく。
「お前、何言ったのかわかっているのか?」
「わかっているわよ。私はあなたに告白したの」
「だからわかってるのか。あの噂のこと」
「わかっているわよ。だから告白したの。呪いなんてないって私が証明するわ」
こういうときの美佳は何を言っても無駄だった。彼女は変に芯の強うところがあった。そして正義感も強かった。
「だけど、もし何かあったらどうするつもりなんだ?」
二人の後を追ってきた孝が言った。
「大丈夫よ。何か起こる筈はないわ」
美佳は平然と言ってのけた。
「そうよ、何も起きる筈はないわ」
三人は背後から声をかけられた方に振り向いた。
そこには松葉杖で立つ佐枝と彼女を支えるようにしている美鈴の姿があった。
だが、そんな彼女たちの様子を少女は物陰から見つめていた。
「美佳、あの噂聞いた?」
午後の授業の準備をしている美佳の方に振り返り、理恵が言った。
「あの噂って?」
美佳は自分は関係ないとでも言うように気のない返事をした。
「例の噂よ。杉山君に近づくと呪われるって…」
理恵の目は面白そうに輝いていた。
この子は相変わらず…。
美佳は変わらない美佳の性格に溜息をついた。
「馬鹿ね、呪いなんてあるわけがないじゃない」
美佳は素っ気なく答える。
「そうかなぁ、でも良かったね。杉山君に告白(こく)らなくて」
「だから私は何の関係もないんだから。杉山君とは」
美佳はこのところしつこいくらいに美佳に対して義男の話題をふっかけてくる理恵に少し煩わしさを感じ始めていた。それならば、理恵の言うとおりにしたらどうなるのだろうか?。美佳は呪いとかおまじない、占いの類はあまり信じていなかった。自分の道は自分の努力で切り開くものだ。それが彼女の信条だった。まぁ、おまじないの類は息抜きのつもりでやってみることがある。消しゴムのおまじないはそんなものの一つだった。
実際、美佳は義男を憎からず思っている。だが、彼には佐伯佐枝という存在がいる。二人は互いに気づいてはいないようだが、二人の思いは通じ合っているようだった。
それは誰が見てもわかることだった。
だから美佳はそんな二人の中を裂く気はなかったのだ。
自分の気持ちは友人として義男に近づきたいだけ、決して恋愛などではない。美佳はそう言い聞かせてきた。この秘めた想いは誰にもわからない。
しかし今、義男はクラスのほとんどの生徒から白い目で見られ始めていた。特に女子は彼に近づこうとはしなかった。
あの噂が怖いからだった。
呪いの噂はこれで二度目だ。
いい加減うんざりする。
呪いなんてあるはずはないのだ。
ならば、それを自分が証明してやろう。
美佳はそう決意して義男の方に近づいていった。クラスメイト達が奇異な視線を彼女に送る。その中で大野孝だけが心配そうに美佳の様子を見守っていた。
美佳はそんな視線など気にせずに義男に近づいて誰にも聞こえるような声で言った。
「杉山君、あなたが好き。付き合って」
それはあまりにも事務的な言葉だった。
「おい、ちょっと待てよ」
美佳の告白に驚いた義男は彼女を廊下に連れ出した。そんな二人を孝が追っていく。
「お前、何言ったのかわかっているのか?」
「わかっているわよ。私はあなたに告白したの」
「だからわかってるのか。あの噂のこと」
「わかっているわよ。だから告白したの。呪いなんてないって私が証明するわ」
こういうときの美佳は何を言っても無駄だった。彼女は変に芯の強うところがあった。そして正義感も強かった。
「だけど、もし何かあったらどうするつもりなんだ?」
二人の後を追ってきた孝が言った。
「大丈夫よ。何か起こる筈はないわ」
美佳は平然と言ってのけた。
「そうよ、何も起きる筈はないわ」
三人は背後から声をかけられた方に振り向いた。
そこには松葉杖で立つ佐枝と彼女を支えるようにしている美鈴の姿があった。
だが、そんな彼女たちの様子を少女は物陰から見つめていた。