秘めた想い~紅い菊の伝説2~
魔の手
呪いなどない、と言い切っている美佳とは裏腹に美鈴は身体の全神経を研ぎ澄ましていた。今『もの』は義男の背後にはいない。だがどこかで様子を見ているはずだった。あれだけはっきりとした美佳の宣戦布告を見ていないはずはない。
だとするならば、今もどこかで様子をうかがっているはずだった。来るとすればどこからなのか。まさかこれほど人の目のあるところで襲ってくるはずはないだろう、美鈴の心の中では様々な思いが浮かんでは走り去っていった。
『紅い菊』はまだ美鈴の中に深く沈んでいる。 彼女が動き始めていないのならば『もの』は近くにいないのかもしれない。美鈴がそう考えたときだった。
ドクン。
どこかから脈動の音が聞こえてきた。
それは何かを呑み込んだような、身体に力を込めたような、どちらともつかない音だった。
『気をつけろ…』
心の奥から『紅い菊』の目覚めた声が聞こえてきた。肩まででそろえた美鈴の髪がちりちりと逆立ち始めた。
ドクン。
脈打つ音が更に響いた。
しかしその音は他の四人には聞こえていないようだった。身構えている美鈴に向かって不思議そうな目をしている。
その肩越しにはこちらに近づいてくる啓介の姿が伺える。
ドクン!
ついに鼓動の音は頂点に達した。
ドン!
突然、何か重たいものが叩きつけられたように大きな音が振動を伴って校舎中に伝わった。大きな音を立てて美鈴達の周囲の窓ガラスや蛍光灯が割れた。
教室や廊下に出ていた生徒達が悲鳴を上げた。
割れたガラスは宙を舞い、その鋭い切っ先を美佳の方に向けた。
美鈴の瞳が紅く燃え、髪が紅く逆立った。『死ね!』
どこからか憎悪と嫉妬に満ちた声が聞こえてきた。それとともに宙にあったガラスが一斉に美佳に向かって跳ぼうとした。
その瞬間、青い光がそれらをかすめ、すべてのガラスを床に叩き落とした。
そこに青い光の剣をもった榊啓介の姿があった。
「逃げろ!」
啓介は美鈴達の向かって叫んだ。
だとするならば、今もどこかで様子をうかがっているはずだった。来るとすればどこからなのか。まさかこれほど人の目のあるところで襲ってくるはずはないだろう、美鈴の心の中では様々な思いが浮かんでは走り去っていった。
『紅い菊』はまだ美鈴の中に深く沈んでいる。 彼女が動き始めていないのならば『もの』は近くにいないのかもしれない。美鈴がそう考えたときだった。
ドクン。
どこかから脈動の音が聞こえてきた。
それは何かを呑み込んだような、身体に力を込めたような、どちらともつかない音だった。
『気をつけろ…』
心の奥から『紅い菊』の目覚めた声が聞こえてきた。肩まででそろえた美鈴の髪がちりちりと逆立ち始めた。
ドクン。
脈打つ音が更に響いた。
しかしその音は他の四人には聞こえていないようだった。身構えている美鈴に向かって不思議そうな目をしている。
その肩越しにはこちらに近づいてくる啓介の姿が伺える。
ドクン!
ついに鼓動の音は頂点に達した。
ドン!
突然、何か重たいものが叩きつけられたように大きな音が振動を伴って校舎中に伝わった。大きな音を立てて美鈴達の周囲の窓ガラスや蛍光灯が割れた。
教室や廊下に出ていた生徒達が悲鳴を上げた。
割れたガラスは宙を舞い、その鋭い切っ先を美佳の方に向けた。
美鈴の瞳が紅く燃え、髪が紅く逆立った。『死ね!』
どこからか憎悪と嫉妬に満ちた声が聞こえてきた。それとともに宙にあったガラスが一斉に美佳に向かって跳ぼうとした。
その瞬間、青い光がそれらをかすめ、すべてのガラスを床に叩き落とした。
そこに青い光の剣をもった榊啓介の姿があった。
「逃げろ!」
啓介は美鈴達の向かって叫んだ。