秘めた想い~紅い菊の伝説2~
「だからさ、この手紙の通り待ち合わせ場所に行ったおまえが悪いの」
啓介はこれ見よがしに便箋を義男の前で扇子のようにひらひらさせた。
彼らの話題はまだ例の手紙のままだった。先ほどは始業のチャイムで無理矢理会話を中断させられたからだ。
「そんなこと言っても気になるじゃないか」
義男は小さい声ながら彼らに抵抗してみせる。
「元々あんたには佐枝がいるでしょう。何で他の子に興味を持つかなぁ」
美鈴が詰め寄ってくる。
だが、その言葉に義男と佐枝が反応した。「一寸待てよ。何でそんなことになるんだ?」
「そうよ、私はこんな奴と付き合ってなんていないよ」
義男と佐枝はまるで同盟を結んだかのように美鈴の言葉に反論した。
「あれ、そうなの。あんたたち仲いいからてっきり付き合っていると思ってた」
「馬鹿なこと言うなよ。俺たちは幼なじみだろう?」
「そうよ、こいつとはただそれだけ。腐れ縁っていう奴よ」
二人の言葉を信じないような視線を美鈴は悪戯っぽく投げつける。
「だいたい俺はなぁ、もっと大人しい子が好きなの。こいつはただ五月蠅いだけじゃん」
義男の耳が赤く変わっていく。
「誰よ、あんたが見て大人しい子って」
同盟は呆気なく切れたのか、佐枝が敵意のこもった言葉を浴びせかけた。
「誰だっていいだろう。そんなの…」
義男はいたたまれないのか、視線を美鈴たちから逸らす。
「俺、誰だか知っているぜ」
不意に発せられた啓介の言葉に美鈴と佐枝の瞳が好奇心の光を帯びて彼の方に向けられる。
「おまえ、やめろよな」
義男が軽視家に鋭い視線を向ける。
「変な誤解を解くにはいいんじゃないか?」「人のプライバシーに土足で踏み込むな」
義男は必死に隠そうとしている。
「そうだな、おまえには好きな奴がいる。それだけでも今の誤解は解けるのかもな」
啓介はそう言って何気なく振り返る。
美鈴と佐枝も吸い付けられるように啓介の視線を追う。
そこには垂れ下がってくる前髪を五月蠅そうに掻き上げながら次の授業の教科書を見ている少女がいた。
彼女は和田美佳といった。
啓介はこれ見よがしに便箋を義男の前で扇子のようにひらひらさせた。
彼らの話題はまだ例の手紙のままだった。先ほどは始業のチャイムで無理矢理会話を中断させられたからだ。
「そんなこと言っても気になるじゃないか」
義男は小さい声ながら彼らに抵抗してみせる。
「元々あんたには佐枝がいるでしょう。何で他の子に興味を持つかなぁ」
美鈴が詰め寄ってくる。
だが、その言葉に義男と佐枝が反応した。「一寸待てよ。何でそんなことになるんだ?」
「そうよ、私はこんな奴と付き合ってなんていないよ」
義男と佐枝はまるで同盟を結んだかのように美鈴の言葉に反論した。
「あれ、そうなの。あんたたち仲いいからてっきり付き合っていると思ってた」
「馬鹿なこと言うなよ。俺たちは幼なじみだろう?」
「そうよ、こいつとはただそれだけ。腐れ縁っていう奴よ」
二人の言葉を信じないような視線を美鈴は悪戯っぽく投げつける。
「だいたい俺はなぁ、もっと大人しい子が好きなの。こいつはただ五月蠅いだけじゃん」
義男の耳が赤く変わっていく。
「誰よ、あんたが見て大人しい子って」
同盟は呆気なく切れたのか、佐枝が敵意のこもった言葉を浴びせかけた。
「誰だっていいだろう。そんなの…」
義男はいたたまれないのか、視線を美鈴たちから逸らす。
「俺、誰だか知っているぜ」
不意に発せられた啓介の言葉に美鈴と佐枝の瞳が好奇心の光を帯びて彼の方に向けられる。
「おまえ、やめろよな」
義男が軽視家に鋭い視線を向ける。
「変な誤解を解くにはいいんじゃないか?」「人のプライバシーに土足で踏み込むな」
義男は必死に隠そうとしている。
「そうだな、おまえには好きな奴がいる。それだけでも今の誤解は解けるのかもな」
啓介はそう言って何気なく振り返る。
美鈴と佐枝も吸い付けられるように啓介の視線を追う。
そこには垂れ下がってくる前髪を五月蠅そうに掻き上げながら次の授業の教科書を見ている少女がいた。
彼女は和田美佳といった。