-Believe- ~始まりの裁判~
2.過去
同日 19時30分 夕那宅 YUNA ber
「はぁ…。」
夕那はため息をついた。
太一くんはどうしてそっけなくなってしまったんだろう?
その事だけが気がかりで仕方なかった。
『こういうとき、女神(レジーナ)なら、相談に乗ってくれるかな…。』
そう思った夕那は、携帯電話を開いた。
女神と読んでいるのは、顔も知らない、メール上だけでやり取りをする仲。
いわゆる、メル友だ。
しかし友達とは言うものの、年齢も本名もすべて不明だ。
そんな人を信用することはおろか友達になることもおかしいのだが、夕那には理由があった。
両親が突然いなくなってしまい、祖母に引き取られた頃。
まだ小学一年生であった夕那は、祖母からもらった携帯電話で運命的那出会いを果たした。
それが、女神である。
『友達になりませんか』
そんなメールが突然来て、相手を信用する人なんてまずいないだろう。
もちろん夕那だって、最初から信用していた訳ではなかった。
しかし、夕那は聞いてしまった。
「長谷部さん家の夕那ちゃん、お父さんたちがほら…ねぇ。」
『お父さんたちのはなし…?』
「殺人なんてねえ…。
夕那ちゃんには関わりたくないわ。殺人者の子供ですもの…。」
「そうね、何があるかわからないもの。」
『さ、つじん…?』
夕那の両親は殺人を犯していた。夕那はその部分だけ記憶がないため、覚えていない。
夕那の両親は今、刑務所にいる。もちろん、刑務所にいるということがどういうことなのかなんて今まで夕那は知らなかった。
だから、一度両親に会いたい一心で刑務所まで行こうと試みたこともある。
しかし、両親には会えないし、祖母には叱られるし、携帯電話は無くすしで散々だったという記憶としてしか今の夕那には残っていない。
まあ、携帯電話は知らない女の子が拾ってくれたのだが。
両親が殺人者であると知る前までは平凡な生活を送れていた。だが、知ってしまってからは夕那の生活は一変してしまった。近所に夕那が殺人者の子供であると広まってしまったからだ。