If.~魂の拠所~
やってしまった、と思った。
直そうとしても直らない、これはきっと悪い癖だ。
「すまん」
「いや、俺の発言も悪かったよ」
ぽんぽんと、軽く頭を撫でるようにされた。
今まで、こんな悲惨な場所で生きてきた、見慣れている。
こんな現状を作り出すのは人間なのだ。いつだって、人間が人間を殺すのだ。
無意識に漏れ出した溜め息に、何故かくすりと笑ったサンドラが「おや」という顔をした。
「ジュード、リーチェはどこに行ったのかな?」
「は?」
「居ないよ」
サンドラの指摘に視線を下げると、先程までしゃがみ込んで床に膝を付いていたリーチェが居ない。それはもう、影も形もない。
そんなのサンドラとの会話に意識が飛んでいただろうか、それともリーチェはいつの間にか煙にでもなれるような力を手にしていたのか。
「というか、どこに行った!」
「あはは」
「笑ってないで探せー!」
焦燥感に任せてサンドラの背中を押し出すように引っ叩くと、わざとらしくよろける。
こんな血に塗れた部屋で、このおちゃらけ男は本当に楽しそうにくすくすと笑っていた。
「叫べば出てくるんじゃない?」
「リーチェは何故こう、勝手に現れて勝手に居なくなるんだ!?」
「そうそう、その調子。リーチェちゃん、早く出て来ないとジュードが心配で気が気じゃないってさ。早く出ておいでー?」
「誰が心配してるって?心配じゃない、僕に迷惑がかかって僕の負担が増えるから出て来いと言ってるんだ!」
「ジュードは嘘つきだねぇ、それとも照れ屋かな?」
「うるさいぞ、サンドラ。いいから探せ!」