If.~魂の拠所~
どこまでも能天気なサンドラに内心焦燥感を煽られながら、近くにあったゴミ箱を引っ繰り返してみたりタンスの抽斗を開けて回ったりした。
こんな場所に居ないというか、入れないのは分かっている、分かっているのだが。
恥ずかしさから、どうにも体が言う事を聞かない。
「リーチェ!」
「はい?」
何となく乱れた息を整える事も忘れて力んで名前を呼ぶと、存外近くから目当ての人物の声がして驚いてしまった。
扉から床に這うような形ではみ出ているリーチェを踏み付けないようにバッと後ろに足を動かして距離を取る。
背後で、サンドラがふき出した後に堪えるように笑っていた。
腹が立って、後ろ手にサンドラの胸の辺りをどん、と力強く拳で叩いてやる。
それでも笑っているが。
「……リーチェ」
思っていたよりも低い声が出た。
「はい。あ、すみません、よいしょ」
それはどうなんだと言いたくなるような顔に似合わない掛け声と共に、リーチェが立ち上がろうとした。
それに手を貸してやりながら、ジュードは怒る気も失せて溜め息を吐いた。もう呆れるしかない。
ついでにまだ笑っているサンドラの股間に一発見舞ってやった。回し蹴りだ。
リーチェがそんなに痛いのだろうか、という視線を向けている。
男にしか分かるまい、サンドラはその場にしゃがみ込んで震えていた。
「で、どこに行って何をしてたんだ?」
「ご覧の通り、この部屋の中に居ました。この中から人の魂を感じた気がして……」
「何?」
ジュードは眉間に皺を寄せた。
人間の魂の場所をはっきりと明確に察知出来るのは、リーチェならではの得意技だ。