If.~魂の拠所~





女ならではの器用さなのか、ジュードとサンドラも多少の察知ならば出来なくはないが、それ以上はさっぱりだった。


という事は、部屋の中に生きた人間が居るか、無事な魂が単体で彷徨っている事になる。




「探そう。俺らの仕事……今回はしっかりと真実を知る事だったよね?」




いつの間にか痛みから解放されたらしいサンドラが、彼にしては低い声で呟いた。


目頭に涙が溜まっている、残念ながら恰好はつかなかったようだ。


リーチェがゆっくりと扉を押し開けた。


他の部屋に比べると血に染まってはいない、家具や雰囲気からして少女の部屋だろう。


壁に寄りかかり座るようにしてひとりの人間が息絶えているだけで、そしてその付近の壁や床に血がこびり付いているだけで。


あからさまに、この部屋だけが可笑しい。


三人がほぼ同時に眉を顰める。




「何故、この部屋の家具だけが……いや、内装だけが焼け焦げていないんだ?」




おそらく同時に考えていただろう疑問を、ジュードがぽつりと口にする。


この家は明らかな火災によって燃え、そして焼け焦げていたのだ。


外装も、そしてこの部屋以外の場所は形を成していなかったり黒く焦げていた。確かに、元の形すら判断出来ないような有様だった。


だが、この部屋だけは違っている。


洋服タンスやテーブル、ベッドや照明器具、様々な家具はそのままの形で残っており、薄桃色のカーペットやカーテンなども風に揺れていた。


真っ先に燃えても可笑しくないようなものだが。


顎に手を当て、何かを考えていたらしいサンドラが、そっと優しく声を紡いだ。


まるで、存在する何かを傷付けてしまわないように。




「それを言ったら、この家屋は木造だよね?」


「ああ。……それがどうかしたか」


「木造だったら、この部屋だけじゃなく全て、この家屋全体が燃えて灰燼と化していても可笑しくないんじゃないかな」




さっきから思ってたんだけど、と付け足して、サンドラが困ったように笑う。


リーチェとジュードの時間が一瞬だけ止まったような気がした。


全くもって気が付かなかった、言われてみればその通りだ。





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