微熱
そっと教室を後にする椛原先生。
その手には、なにもない。
゛羽留ちゃん、今ね、ヒロも一緒なんだよ…保健室で寝てるだよ…夢の中で会わせてあげるね゛
どのくらい寝てしまたのか?頭の中は、まだ半分しか機能してない中、ようやく目が覚める。
「輝…今何時?」
タバコに、火をつけながら輝に問う。
「コラッ!ココで吸うなっていつも言ってんだろ!はよう消せ!輝、先に帰るってよ!バーカッ」
やけに、笑顔なねーちゃんが、応える。
「ワリィ!ねーちゃん俺も帰るわ」
そう応えながら、火の着いたタバコを水の入った紙コップに投げ入れた。
「あっ!そうそう、あんたカバン教室でしょ?ちゃんと、取りにいきなよ」
「今日は、いいよ、三階まで上がんのダリぃし〜」
保健室の出入口付近での、やり取りが始まる。
「いいからさ!いきな!ふふふ」
椛原先生、ちょっとスゴんだ後ニャケ顔
「怖え〜!わかったよ、じゃあな」
笑いながら、俺も返す。
「じゃあな!」
ねーちゃんは、優しい顔をして送り出す。
゛まっ、いっか!゛
足取りも重く、俺は教室へと、歩きだす。
すれ違う人もなく、部活やってる後輩達の掛け声が妙に心地よく、頭の中も正常化し、足取りも軽くなっていく。
ガラガラーッ…
゛んっ?゛
「3の5だよな…」
三階の奥の教室、間違ってるはずはないが、クラスの表示板を確認する。
゛俺の席だよな…゛
誰だ…女の子が座ってる…
座ってるというか、机におおいかぶさる様に…うなだれているようにも見えた。
俺は、自分の席にへと、足を運ぶ。
゛気分でもわるいのかな?゛
女の子の真隣まで近づくと゛スースー゛と寝息が聞こえてきた。
ちょっとだけ、覗き込む…
幸せそうな顔して眠ってるなんか微笑ましい…そのあどけない寝顔に…俺は、笑みがこぼれた。
゛そっとしとこっ゛
「まっいっか!」
俺は、カバンは取らずに教室を後にした…。
まだ、名前もしらない少女に、ほんの少しだけ幸せな気持ちをわけてもらった様な気がした… 。