微熱
2月14日
放課後…
居残り生活も、今日でおしまいのようだ。
なにひとつ喋らない俺に、先生連中も、あきらめモード。
「お前…そんなに強いのか…?」
藤井先生は、一言言い放ち席を立った。
(つよくない…)
なんか、シックリこないまま、自転車置き場に向かう。
羽留がいる…
羽留が、待っててくれた。
「はいっ!ハッピー♪バレンタイン♪」
羽留は、嬉しそうに、大きな手提げ袋を俺に差し出した。
初めて会った時の、ぎこちなさはない。
真っ直ぐ俺を見てる。
「デカイな!いいのか?こんなの貰っても?」
チョコだけだと、思っていた…
「うん!おうちに着いてから、開けてね!お手紙も書いてあるから、読んでね。絶対だよ。」
羽留は、笑顔のまま応えてくれる。
「わかった。そうするよ。」
自然に笑みがこぼれる。
「ごめんな!こんな時間まで…暗くなっちまったな!送ろうか?」
なんか、一緒にいたい…一秒でもながく…
「ありがとう…でも、友達と一緒だから…ヘーキだよ。」
校舎の方に視線を向ける羽留
あの時、羽留と一緒だった女子二人が、見守っている。
「そうだな…あいつらが一緒なら、心配ないな!」
笑顔で応えた…
「うん。」
「ありがとう。じゃあまた」
手を振りながら…
とっ、その瞬間…!
「高梨〜っ!」
あの、甲高い声が駆けよってくる。
「高梨、遅くなってもヘーキでしょ?羽留のこと、送ってくれる?
うちらもさ〜チョコ渡したい男子が居る訳よ〜あっちでまたせてるんよね〜」
(あっちってどっちだ?)
「羽留んち、ほら、親、結構キビシーんだよね〜こないだ、あんたんち、近くいった時遅くなったでしょ?羽留、ものすごく怒られたみたいんよ!だからさ!
これ以上、羽留うちらには、付き合えんのよ!ね!頼んだよ〜じゃあね!変な事すんなよ〜」
二人の女子は、あっちの方へと駆けていった。
(なんだ〜あいつら、薄っぺらいカバン以外、何ももってねぇーじゃねぇか!
…ありがとな…)
「優しいな…アイツ等…」
俺の気持ちに気付いたか…羽留のことを思ってか…
二人の女子に、感謝した。
「うん…」
羽留は…うつむきながら…小声でつぶやく…
人、一人か、間に入る距離…
うつむき加減の女の子…
最初で最後のハッピーバレンタイン…