【完】甘い生活~危険な幼なじみに溺愛されて~【上】p356まで加筆済
しばらくそのまま、二人で見つめあって、朝田君が、薄く唇を開き、何かを言いかけたその時──……
「恋那っ!」
突然、悲痛そうな、でもどこか責めるような鋭い声が飛んできて、ビクッと身体がひとりでに震えた。
……光弥の、声。
聞きなれたハズのその声は、嬉しいのに苦しくて。今は、耳を塞いでしまいたいと願うほどに聞きたくなくて。
もう、自分が自分でわからない。
このまま、目も耳も塞いで、逃げ出してしまおうかと思っているうちに、光弥に強く手首を掴まれて小さな悲鳴を上げた。
「……った……。離してよ、光弥……」
そう言ったのに光弥は何も言わないで。むしろ、手の力はギリリと強みを増すようだった。
その事に、また泣きたくなる。
なんで怒ってるの?
怒りたいのは、私なのに……。
そのまま、本部へと歩いていく光弥。