【完】甘い生活~危険な幼なじみに溺愛されて~【上】p356まで加筆済
ドキドキと甘い心地に浸っていると、不意に光弥が低くボソりと声を紡いだ。
「……違うから」
「え?」
光弥が突然、そんな風に言ってきて何のことなのか瞬時に理解することが出来なかった私は、首を傾げた。
すると光弥が、真っ直ぐな瞳で、私を見つめてくる。
「さっきの、誤解すんな。何もねーから」
さっき──それで漸く思い至った、夏希ちゃんの、事。
それまでは甘いドキドキだったものが、すぐにズキリと痛みを伴うような嫌なものに変わった。
思い出したら、泣いてしまいそうだ。既にじわりと目の端に熱いものが溜まっているのがわかる。
「分かってるけど……。でも、キスは、辛かった……」
震える声でそういうと、光弥が怪訝そうな顔をする。
「キス?何言ってんの恋那。そんなん、してねぇよ」