キレイになったのは
地元を離れた私が綺麗になったのは、けっしてトオルの為じゃなかった。

ほとんどした事のなかったお化粧も色々と研究して。服だって高級なモノをすぐに揃えるとかはムリだったけど、手の届く範囲で頑張って揃えて。

そうやって私が努力した結果だけを見たトオルが勝手に私の彼氏を名乗っているだけ。

でも。

同窓会に2人で登場とかって、絶対にカレカノだよね。そんな形であの人に再会したくないから。私はまだ体調悪い振りをして会場のひとつ上の階のレストルームへ向かった。

トオルはやっぱり付いては来ない。まぁ、気分が悪いと言ってるのに隣でタバコを吸い続けてたし、ね。

それでも誰かに見つからないように気を付けながら短いメールを送る。

しばらくすると少し急ぎ気味の足音が聞こえてきた。あの頃から耳に馴染んでた変わらない音に、待ちきれない私は足音の主に抱きつく。

「カオリ!ビックリさせないで。あぁ、でももっと顔を見せて。」

甘く響く声に誘われるように私は顔を上げた。

「見違えるぐらい綺麗になってしまったんだね。」

少し寂しそうな表情を浮かべるあなたに、私はとびっきりの笑顔で返す。

「ゴメンね、センセ。」

あなたが居るのに、あっちでも彼氏のいるわたしで。
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