天神学園高等部の奇怪な面々34
「随分と早いな、丹下」

背後から声をかけられ、龍太郎は振り向く。

黒髪短髪、隻眼、右目には大きな傷跡を持つ巨漢の剣客が立っていた。

夕城 翡翠(ゆうしろ ひすい)。

天神学園高等部体育教師。

夕城家の現宗主で、二児の父。

「…よぉ」

龍太郎は薄笑みを浮かべる。

「生まれたんだって?」

「…ああ」

ニコリともせずに返事する翡翠。

「…めでてぇじゃねぇか」

薄笑みは満面の笑みに変わった。

が、それも束の間。

「今日は…よろしく頼む」

「……何をだ?」

胸を貸してくれという事か。

それとも勝ちを譲ってくれという事か。

翡翠の言葉はそんな風に聞こえた。

「さぁな」

そんな問いかけにも一向に動じず。

「ソイツはあんたが決めてくれ」

龍太郎は彼の横を通り過ぎて行った。

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