天神学園高等部の奇怪な面々34
「ついていく必要なし」

翡翠は片手に川蝉を握り締めたまま、もう片方の手で腰の業物を握った。

四季・色彩銘刀のひとつ、黄昏。

妻の愛刀を借り受けてきたものだ。

…疾駆しながら、十牙はその様子を窺う。

ずっと気になっていた。

二刀持ちながら、何故川蝉しか抜かないのか。

自分は二刀振るうほどの相手ではないという事か。

その事に屈辱と怒りを感じていた。

しかし。

「否」

十牙の心中に答えるように、翡翠が言う。

「二刀より一刀が劣る訳にあらず。俺は戦況に応じて二刀か一刀かを選んでいるに過ぎぬ」

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