不良だらけの危険なバイトッ☆

ふと車内に目を戻すと、席でイヤフォンをしながらうつむく男の人の姿が目にとまる。


ワックスで整えられたキレイな黒髪。


…少しだけ、君に似た横顔。


違うってわかってるのに目で追いかけてしまう。


駄目だってわかっているのに…。


いつもと違う日常。


一年前から一つだけ変わってしまったこと。


それは…。


駅に電車が止まって、その男の人は早足で出て行く。


「発車します」


アナウンスが流れて徐々に男の人の影は遠ざかっていった。


君が…


隼人が…


あたし達の前からいなくなってしまったこと。


少しだけ車内を見つめる視界がぼやけた。


あのクリスマスの後、あたしと隼人は一言も口を聞くことはなかった。


部屋も隼人は藤堂君の部屋に住むことになって、別々で。

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